小さなミニチュアと、大きな気づき。
2025/06/14
ご高齢のお客様との出会いから
先日、まつり堂模型店にご家族と一緒にいらっしゃったご高齢の女性のお客様が、店内のウォーハンマーミニチュアの展示をじっとご覧になっていました。ペイント済みのミニチュアを前に、しばらく目を細めながら見入っておられたのが印象的で、声をかけてみたところ、こんなふうにおっしゃいました。
「すごく興味があるの。こういうの、やってみたいって思う。でもね、小さくて見えないのよ……」
その言葉に、私ははっとさせられました。
模型やミニチュアの世界は、若い方や中年の趣味と思われがちですが、実はご高齢の方にとっても深い魅力がある世界です。細かい作業は確かに目が疲れるかもしれませんが、その分、集中して手を動かすことには意味があります。指先を使い、色を選び、形を整える。その一つひとつが、脳を刺激し、心を落ち着かせ、日々の生活にささやかな達成感をもたらしてくれるのです。
「小さくて見えない」という言葉には、ご自身の体の衰えへの戸惑いも滲んでいました。でも、道具さえ工夫すれば、その“やってみたい”という気持ちは叶えられるのではないか。拡大鏡を使ったり、大きめのミニチュアを用意したり、もっとゆったりとした空間で、誰かと一緒に塗る時間を用意したら──きっと、またひとつ「模型の力」をお伝えできるのではないかと思ったのです。
模型を通して、自分の手でものを作る。色を塗りながら、過去の思い出に浸ったり、誰かと話をしたりする。完成したものを飾って、「自分で作ったんだよ」と誰かに見せる。そういう時間が、年齢に関係なく、人生の中にあったら素敵だなと、心から思いました。
いつか、まつり堂模型店で「シニア・ミニチュア体験会」みたいなイベントを開いてみたいと思います。ミニチュアは小さいけれど、その可能性は本当に大きい。今日のお客様との出会いが、私にそれを改めて教えてくれました。
「見えないけど、興味はある」
その言葉の奥にある気持ちを、これからも大切にしていきたいと思います。