🇨🇳 美少女プラモデルの熱狂、中国でも──カルチャーと規制のはざまで
2025/06/27
🇨🇳 美少女プラモデルの熱狂、中国でも──カルチャーと規制のはざまで
日本の模型売り場ではすっかりおなじみとなった「中国製美少女プラモデル」。日本に住む私たちは、ごく普通にそれら中国製の美少女プラモデルを買い求めることができますが、中国国内の美少女プラモデル事情はどうなっているのでしょうか、また、当局規制も気になるところです。
実は、中国本土でもこの分野は大きな盛り上がりを見せています。
中国における美少女カルチャーの起点をたどると、1990年代から2000年代にかけて巻き起こった日本アニメブームの影響が大きいと言われています。『美少女戦士セーラームーン』や『新世紀エヴァンゲリオン』など、日本発の「美少女が戦う」という物語に強く影響を受け、当時の若者たちの心をつかみました。
その後、2000年代後半にはネット動画やスマホの普及が追い風となり、日本アニメの視聴環境が一気に整いました。そこから美少女キャラクターは中国の若者文化の中でサブカルの象徴となり、人気が広がっていったのです。
ゲームの分野でも、日本の「艦これ」に触発され、中国オリジナルの「少女前線(ドールズフロントライン)」や「碧藍航線(アズールレーン)」といった美少女キャラクターを主役に据えたタイトルが次々と誕生しました。受け手としてだけでなく、クリエイター側としても美少女をテーマにした作品を積極的に生み出す土壌が整っていったのです。
そうした中で、美少女プラモデルの人気も中国で大きく飛躍します。いわゆる「机甲少女(ジージャーニー)」という呼び方で、メカ少女プラモの分野は中国メーカーにより次々と新商品が開発されていきました。アルファマックスや Eastern Model、モモタロウモデルなどが自社のオリジナルデザインを次々に投入し、日本の市場に逆輸入されるほどのクオリティを誇るキットも登場しています。
もともと日本製の美少女プラモデルを輸入して楽しむファンが多かった中国にとって、こうしたオリジナル美プラは非常に魅力的に映り、SNSを通して一気に広がりました。小紅書(RED)や WeiboといったSNS上では、塗装例や改造例を写真や動画で共有する文化がすっかり定着し、展示会や模型イベントの会場でも、美プラは今や人気の中心を担う存在です。さらに、中国の同人イベントでも美プラ関連の改造パーツや塗装見本が並ぶなど、日本に引けを取らない盛り上がりを見せています。
一方で、中国当局によるコンテンツ規制が厳しいことも忘れてはなりません。過度に露出の多いキャラクターや性的に刺激が強すぎるデザインについては、青少年保護の観点から輸入差し止めや販売停止といった処分を受ける可能性があります。美少女プラモデルでも、肌の露出が極端だったり挑発的なポーズで成形されているものは、税関で止められたり、審査で販売許可が下りなかったりする事例があります。
とはいえ、ヒロイックで比較的健全なデザインのメカ少女プラモについては問題なく流通しており、店頭でも幅広い商品が販売されています。つまり中国では、美少女プラモデルそのものが規制されているわけではなく、その中の「表現の度合い」によって検閲がかかるというイメージが適切でしょう。
最近では、美少女カルチャーをもっと深く体験したいと考える中国のファンが、日本へ旅行に訪れるケースも増えています。秋葉原や大阪・日本橋といったホビーの聖地を目指し、日本の最新プラモデルやイベント限定品、さらには同人系ガレージキットを入手するために来日する人が少なくありません。
日本の模型イベントに合わせて渡航し、実物を見て学びながら、モデラー同士で交流を深める熱心なファンも増えています。中国国内で手に入りにくいレアアイテムを日本で探す、というだけでなく、「日本の空気感」を味わいながら美少女プラモに触れたいという情熱が、その旅のモチベーションになっているようです。
かつて中国の美少女文化は、日本から一方的に輸入される立場でした。けれども現在は、中国オリジナルのデザインが逆に日本に輸出されるほど成熟し、さらにその上で日本を訪れて元祖の文化に直接触れたいと考えるファンが増えているというのは、とても面白い現象です。
「自分だけのヒロインを作りたい」
という想いは、文化も国境も越えて共通するものなのでしょう。中国では当局の規制の網をかいくぐりながらも、熱心なモデラーやファンたちの情熱がしっかりと根を張り、今後ますます大きな盛り上がりを見せていくと考えられます。日本と中国の間で、美少女プラモを通じた交流やコラボレーションがさらに活発になる未来も、そう遠くないのかもしれません。