コンビニで広がるガンプラの裾野、模型店に求められる“次の役割”とは

コンビニでガンプラ買える時代、模型店はどうする？

最近、セブンイレブンでガンプラが「他の商品と同様に店舗から本部に発注できるようになった」という話を耳にしました。模型専門店ではなく、近所のコンビニでガンプラが買える時代が来たのか──そう思うと、少しワクワクする一方で、「でも売れてないらしい」という現実もあるようです。

なぜガンプラは、コンビニで売れにくいのでしょうか。そこには、いくつかの「客層のズレ」があるように思います。

コンビニは、基本的に“即時性”の高い商品が中心です。おにぎり、飲み物、雑誌、スマホの充電器。全部、「今すぐ必要」「今すぐ使いたい」ものばかりです。ガンプラはどうでしょうか。買ってすぐ作る人もいるかもしれませんが、たいていは「週末にじっくり作る」「積んでおいて時間のあるときに楽しむ」商品です。いわば“趣味”の世界。ついでに買うものではなく、「それを買う目的でお店に行く」ものなのです。

さらに言えば、ガンプラを買う層と、コンビニをよく使う層の間にもズレがあります。コンビニは朝晩の通勤時間や、昼休みに立ち寄るサラリーマン・学生・主婦が中心。彼らの多くは「今必要なものを買って、すぐ出る」行動パターンを持っています。模型店に来るお客様のように、「商品棚をじっくり見て悩む」「完成品を眺めてインスピレーションを得る」ような時間の使い方とは、やや異なります。

また、コンビニ側にも難しさがあります。仕入れ担当者がガンプラに詳しいとは限らず、在庫の回転率も読みにくい。種類も多く、サイズもバラバラ。雑誌やお菓子のように、陳列や棚割りが簡単ではありません。さらに、人気商品が入荷しても、すぐに“転売ヤー”に買い占められることもあり、一般のファンが買えない問題もあります。

とはいえ、模型店である私たちから見て、コンビニでのガンプラ販売は決して否定的に見るべきものではないと考えています。

実際、まつり堂模型店店主として私は、今後もガンプラブームが続く限り、コンビニでのガンプラ取り扱いは進み、取扱店舗数も確実に増えていくだろうと見ています。ガンプラはすでに「趣味のアイテム」から「社会現象」へと拡大しつつあり、あらゆる流通チャネルが注目しているのは自然な流れです。

一見、それは模型専門店にとって「シェアを奪われる」脅威のようにも見えます。しかし、私はむしろ逆だと考えています。

コンビニがガンプラを扱うようになれば、それだけ「模型と出会うきっかけ」が街のあちこちに生まれます。いままで模型店に足を踏み入れたことがなかった人が、「たまたま見かけて買ってみた」「久しぶりに作ってみた」という体験を通じて、再び模型の世界に戻ってきてくれるかもしれません。模型店は、そうした“入口”を受け止める“次の場所”になるべきなのです。

では、今後コンビニでスケールモデルや美少女プラモデルが売られるようになるのか？　

それは現実的には難しいと見ています。ガンプラは知名度とブランド力が非常に高く、ENTRY GRADEなどの簡易ラインがあるからこそコンビニでも成立しやすいのです。 一方で、スケールモデルや美プラはパーツ点数も多く、技術的ハードルも高く、箱も大きい。しかも購買層が狭く、嗜好が細分化されているため、コンビニ流通に適した商品とは言えません。

したがって、コンビニは今後も一部の限定ガンプラやエントリー向けモデルを中心に販売しつつ、模型全体のすそ野を広げる補助的な存在であり続けるでしょう。模型店が行うべきは、そのすそ野から入ってきたお客様に、深くて楽しい模型の世界を案内することです。

模型店の強みは、「見て、聞いて、学んで、試せる」場所であること。塗装のコツを話したり、パーツの加工を実演したり、完成品を展示したり、質問に答えたり──それは、コンビニには絶対にできないことです。

だからこそ、私はこう考えています。

コンビニのガンプラ販売には、プラモデルの裾野を広げるという大切な役割があります。 偶然の出会いで初めてガンプラを手に取った人が、「もうひとつ作ってみたい」と思ったとき、その次の一歩を案内できるのが、私たち模型店です。

模型店は、ただ闇雲に専門性を高めればいいわけではありません。むしろ、「コンビニから模型の世界に入ってきた初心者を、やさしく受け止める」空気や雰囲気が必要になるでしょう。

そして、「コンビニガンプラの次に何を作ればいいか？」という問いに応えられる提案力と、実際にその商品を手に取れる品ぞろえ。これこそが、模型店に求められる次の力です。

模型の世界をもっと楽しんでもらうために。専門性とやさしさ、その両方を備えた店づくりを、これからもまつり堂模型店は目指していきたいと思います。