痛車製作で考えた著作権問題
2025/07/14
ルールとマナーの上に成り立つ、日本の二次創作文化
まつり堂模型店の店長痛車は、壽屋『創彩少女庭園』のリツカさんと、まどかさんのイラストを使用しています。こうしたイラストを使用する際に気になるのは「著作権」の問題です。
アニメやマンガ、ゲームのキャラクターをもとにした創作活動——いわゆる「二次創作」は、日本のポップカルチャーの中でも、世界に誇る独自の文化のひとつです。
同人誌、痛車、ファンアート、コスプレ、グッズ制作など、その形は多様であり、ファン同士が楽しみ、創り、交流し、広めていくこの文化は、もはや日本のカルチャーを支える「土台」とも言えるでしょう。
しかし、この豊かな創作文化は、「法律の外にある自由」ではありません。
今回は、店長自身が「創彩少女庭園」痛車を製作するにあたって経験したことや、解決した問題を元に、著作権法上の原則と実際の運用として黙認されている現状の両面から、改めてこの文化の背景を見つめなおしてみたいと思います。
■ 法律上は「無許可使用=著作権侵害」
日本の著作権法では、アニメやゲームのキャラクターや作品の画像・ロゴなどはすべて著作物に該当します。これを
複製する(痛車用フィルムの作成・印刷・スキャン・コピーなど)
公衆送信する(SNS投稿など)
翻案・改変する(痛車フィルム用にデザインに手を加える・アレンジやデフォルメ)
商用利用する(痛車に自分のお店のロゴや会社名を入れる・販売や広告に使う)
といった行為は、原則として著作権者の許可が必要です。
たとえ非営利の個人活動であっても、法的には「著作権侵害」にあたる可能性があります。
罪としての著作権法違反は、著作権者が訴え出たときに発生しますが、著作権者が黙っているからと言ってやり放題にやってしまうと
「このまま放置すると、自社のキャラクターのアイデンティティが損なわれる、関係会社に迷惑がかかる、自社のキャラクターの悪用で自社の利益が損なわれる、自社のキャラクターが一般の人に不快感を与える・・・から、違法利用には厳しく対応しよう」
となって、自分が訴えられるだけでなく、日本の貴重な文化が損なわれてしまうことになりかねません。そのときにあなたは、どうやって日本中のクリエイターやファンに対して責任をとるのですか?という問題です。
■ それでも日本では黙認されてきた「現実」
現実には日本の多くのアニメ・マンガ等のサブカルチャー著作権者は、一定の条件を満たした二次創作活動を黙認または容認しています。
個人としてドライブして楽しむ痛車の製作、コミックマーケットやBOOTHなどでの同人誌頒布
SNS上でのファンアートや痛車の投稿
個人の趣味としてのグッズ制作や展示
これらは法的にはグレーな存在ですが、ファン文化の活性化に寄与するものとして好意的に受け止められているのが実情です。
近年では、「暗黙の了解が理解できず、グレーゾーンについてあれこれ言質を取ろうとするファンの出現」や「企業の遵法意識が厳しく問われるようになった時代的背景」などにより、企業側から「二次創作ガイドライン」を明確に出す動きも広がっており、共存の道が模索されています。
■ 黙認されることと、自由にしてよいことは違う
ただし、ここで重要なのは——
「黙認」はあくまで“お目こぼし”であって、“権利の放棄”ではない
という点です。
黙認されているからといって、どこまでやっても問題ないというわけではありません。
・他人のイラストを無断で使う ⇒特に、企業と比較して、二次創作の著作権者は作品の勝手な利用について非常にキビシイ傾向にあります。
・企業ロゴを勝手に組み合わせる ⇒ロゴ企業が特定の企業・商店・個人を応援していると誤認させる使用・暗黙の了解による二次創作なのに公認と誤認させる使用、などは禁じられるケースがほとんどです。
・性的・過激表現を無制限に行う
・販売して利益を得る
これらはトラブルの火種となり、前述の通り、結果的に日本の貴重な守るべき文化全体への締め付けを招く可能性すらあります。
■ 文化を守るのは、ファンの行動と自律
日本の二次創作文化がこれほどまでに豊かで続いてきたのは、著作権者の理解と、ファン側の節度ある行動がバランスを保ってきたからです。
法を意識し、マナーを守り、創作に敬意を払いましょう。
「自分一人の行動ぐらい」という気持ちが積み重なると、業界全体に影を落とすこともあります。
私たちが楽しんでいるこの創作文化は、自由で寛容に見えて、実はとても繊細な信頼関係の上に成り立っているのです。
ルールを知り、マナーを守ることは、自由な創作活動を未来につなぐ第一歩。
この素晴らしい文化を次の世代にも残していくために、私たち一人ひとりができることを意識していきたいですね。
■痛車を著作権者の存在するイラストで作成するなら
痛車の場合はもちろん、車オーナーの完全オリジナルキャラクターで作成すれば、自身が著作権者なので、非常にクリアに著作権問題を解決することができます。しかし、多くの場合は既存のアニメキャラ、マンガキャラを使用することになるので、「黙認」についての深い理解が必要です。
・著作権について理解し、「暗黙の元に厚意で使わせて頂けている」ことを忘れない
・自分のお店のロゴを入れたりして、勝手に商用利用しない
・オリジナル作品をけがさない・オリジナル作品が守っている品位を自分も守る
・グレーゾーンについて、著作権者に質問をしたり、SNSで話題にしたりして、著作権者を追い詰めない
・痛車への利用であれば、道交法を守って安全運転に努める
・著作権者からもし、指摘を受けたら素直に従い、抵抗したり、SNSのネタにしたりしない
守らなければならいこと、気をつかわなければならないことがはたくさんありますが、それを守ることによって日本の二次創作文化を守り、楽しい痛車ライフを送ることができるのです。