なぜ自動車模型は旧車ばかりなのか?
2025/09/01
現行クラウンや70カムリはなぜ出ないのか
まつり堂模型店でも人気の1/24自動車模型。けれども、メーカーから届く新製品の注文リストを見ても、リストに並んでいるのはスカイラインやソアラ、セリカ、シビックといった旧車がほとんど。現行クラウンや店長の愛車70カムリのように、実車として多くの人に親しまれているモデルはなかなかキット化されません。
一方で、アメリカのメーカーは現行マスタングやカマロ、SUVやピックアップを次々に模型化しています。日本国内でもGT-Rや新型フェアレディZ、新型プレリュードのように現行車・新車がキット化された例はあります。ではなぜ「旧車ばかり」という印象になるのでしょうか。
日本のプラモデル市場が旧車に偏る最大の理由は店長が思うに「需要」です。プラモデルを買う中心層は40代以上のモデラーで、作りたいのは青春時代に憧れた名車。模型は単なるスケールダウンではなく、「思い出や憧れを形にする道具」として求められます。現行車は実用品としての身近さはあるものの、「憧れ」としての特別感が薄いため優先度が下がりやすいのではないかと思います。
さらに「金型コストと寿命」も大きな要因でしょう。プラモデルは高額な金型投資を必要とし、長期間販売して回収する必要があります。旧車や名車は何十年経っても売れることがこれまでの歴史の延長として予測できますが、現行車は数年でモデルチェンジしてしまうため、将来にわたって人気が続くかどうかの予測が立たず、採算をとるにあたってのリスクが高くなります。
また、旧車・現行車ともにメーカーとのライセンス契約は必要ですが、現行車は「今まさに販売している商品」であるため、ブランドイメージ管理が厳しく、条件がシビアになりやすいという事情もあります。
アメリカでは現行車が出る理由については、調べた限りでは、アメリカでは、実車オーナーが「自分の愛車をミニチュアで欲しい」と思う文化が強くあるようです。模型は趣味であると同時に「オーナーズグッズ」のような側面を持ち、自動車メーカーも販促の一環として模型化を積極的に後押しします。だから現行車も次々に商品化されるのです。
一方で、京商などのダイキャストモデルは比較的新型車が出ている印象があります。ここで重要なのが「インジェクションキット」と「ダイキャストモデル」の違いです。
インジェクションキットつまり、ふつうのプラモデルは、金型代を回収するために「長く売れる車種」が有利。組み立てる楽しみが中心で、購買層は旧車に憧れを持つモデラー。
ダイキャストモデルは、完成品を短期間で売り切る方式も可能。実車オーナーが「愛車のミニカーが欲しい」と購入するため、現行車のほうが需要に直結しやすい。
この違いが、旧車中心のプラモデルと現行車中心のダイキャストという“市場の住み分け”を生み出しているようです。
とはいえ、GT-Rや新型フェアレディZの例が示すように、メーカーが本気を出せば現行車もキット化は可能です。店長としては、現行クラウンや海外で圧倒的に人気の70カムリなど、現代の定番車種が模型化されれば、国内外のファンが喜ぶと思います。旧車人気に押されるかもしれませんが、「愛車を模型で再現したい」という潜在的なニーズは、お店でお客様とお話をした感覚では確実に存在します。
自動車プラモデルが旧車ばかりになるのは、
モデラー層の嗜好(憧れ・思い出を作りたい)
金型投資と販売寿命の違い
現行車ライセンスの厳しさ
といった事情が重なっているからだと思います。結局のところ、現行車が模型化されにくいのは「需要がない」わけではなく、メーカーの投資判断と市場戦略によるものです。いつの日か、クラウンやカムリの最新型が1/24スケールで登場する日を、店長も心待ちにしています。