まつり堂模型店

TOMIXとTOMYTEC、二つのブランドは必要か?

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TOMIXとTOMYTEC、二つのブランドは必要か?

TOMIXとTOMYTEC、二つのブランドは必要か?

2025/09/13

TOMIXとTOMYTEC、二つのブランドは必要か?


鉄道模型ファンの間で最近よく耳にするのは、「最近の鉄コレ新製品は価格が高すぎる」という声です。

ご存じの通り、「鉄コレ」はディスプレイモデルですので、Nゲージとして走行させようと思えば、動力ユニット、トレーラー用台車、パンタグラフなどを別に購入しなければなりません。最近の製品では
これらの別売りパーツをそろえると、高額といわれるマイクロエースの同型車両商品に迫る価格になってしまいます。「ライトは点灯せず、室内灯もつかない、足回りはチープ、動力車の床下危機は汎用品、それでマイクロエースと同等?」となれば、割に合わないと思う Nゲージャーも多いと思います。

鉄コレが高価格化した理由は、店長の想像ではありますが、次のようなものではないかと思います。


① コスト上昇の現実
プラスチック原料、金型、塗料、輸送費──あらゆるコストが上がっています。海外工場の人件費や為替の変動も重なり、「安さを維持する」こと自体が無理筋になっています。

② ファンの要求水準の変化
かつては「車体のシルエットを似せれば満足」でしたが、今は「前面窓のサッシまで正確に」「ライト類の別パーツ化を」「塗り分けの細密化を」という声が強く、結果として金型精度も塗装工程も上位グレードに近づきました。つまり“ユーザーが望んだ進化”が価格に跳ね返っているわけです。

③ 大手車両の参入という戦略
鉄コレはもともと“地方ローカル線の短編成”というニッチを埋めてきましたが、それだけではシリーズの存続が難しい。売上規模を確保するために“大手私鉄や人気の都市型車両”を商品化せざるを得ないのです。そして大手車両はバリエーションや塗装の種類も多く、資料調査・設計コストが格段に増えます。

④ 「模型と玩具」の中間という位置づけの変化
当初は「玩具寄りの価格で、模型ファンがついで買いできる」シリーズでした。今は“走らせても見栄えがする鉄道模型の準完成品”としての立ち位置にシフトしつつあり、価格もその位置を反映しています。

そして、その延長で出てくるのが、「TOMYTECの鉄道車両は、いっそTOMIXブランドの“組み立てキット”として統合した方が良いのでは?」という議論です。そうすれば、今の鉄コレの抱える問題点の多くは解決され、精密なマイナー車両が理にかかった価格でリリースされるかも、TOMIX の廉価版ブランドとしての立ち位置を得ることができるのでは、と淡い期待を抱くことができます。

これは確かにもっともな指摘だと思います。 ところが、タカラトミーグループがTOMIXとTOMYTECを両立させている背景には、明確なブランド戦略があります。

TOMIX:本格的な鉄道模型ブランド。完成品・走行性能重視・専門店販路。
TOMYTEC(鉄コレ):廉価コレクションモデル。雑貨店・量販店・書店など新規層への販路拡大。

つまり、もともと鉄コレがリリースされ始めたころは、販路の違いとターゲット層の違いが存在意義でした。鉄コレは「机の上で並べる」「コレクション感覚で買う」ことで鉄道趣味の裾野を広げる役割を担っていたのです。

ところが、近年の価格高騰により鉄コレは「安価なコレクションモデル」ではなくなってきました。動力ユニットを加えればTOMIXと大差ない価格帯に届き、「結局どっちを買えばいいのか」という混乱を招いています。

さらに、鉄コレも大手私鉄や都市型車両を商品化するようになり、TOMIXと車種の領域まで重なってきました。結果として「二つのブランドを抱える意味はあるのか?」という疑念が強まっているのです。

ユーザーから見れば、鉄コレを「TOMIXの廉価版キット」として位置づける方が納得しやすいかもしれません。 価格が抑えられ、「ジオラマのストラクチャーとしても使用できる」「走らせたい人は自分で動力を追加」という明快な導線ができると思います。

 ブランドとしても「完成品=TOMIX、キット=TOMIX kit」という整理が可能 こうすれば、現在の「鉄コレ=高いディスプレイモデル」というモヤモヤ感は和らぐでしょう。

ただし、メーカー側には難しい事情もあることが容易に推測できます。

販路の問題:TOMIXは模型店中心、TOMYTECは書店・雑貨店でも売れる。ブランドを一本化すると販売ルートが崩れる可能性がある。
ファン層の広がり:鉄コレは「鉄道趣味に詳しくない人でも買いやすい」ブランドイメージを持っており、TOMIXと統合すると“模型の敷居の高さ”が強まる恐れがある。
価格と収益性:TOMIXの名前で売ると、どうしても「走行性能や品質」を期待されるため、簡略仕様の鉄コレをTOMIXブランドに組み込むのは難しい。

矛盾を抱えつつの共存 結局、タカラトミーは「裾野を広げる鉄コレ」と「本格派のTOMIX」を両輪として残しています。しかし、価格の高騰と車種の重複によって、すみわけは揺らぎつつあり、ユーザーの納得感は低下しています。

店長自身は、「鉄コレをTOMIXの組み立てキットに再編」という考え方がよいのではないか、と思います。その方がユーザーにとって分かりやすく、納得感のあるブランド構造になるでしょう。ただし、販路やブランドイメージの都合でメーカーは踏み切れない。つまりここには“ビジネスの必然”と“ユーザー心理”のギャップが横たわっているのです。 模型店としては、そのギャップを丁寧に説明し、「鉄コレでコレクションする楽しみ」と「TOMIXで本格的に走らせる楽しみ」を橋渡しすることが大切だと考えています。

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