模型屋と猫ねこ
2025/10/29
模型屋と猫
まつり堂模型店には、最近ひとりの小さな“訪問者”がやって来るようになりました。
名前は「くろろ」。黒く艶やかな毛並みをした地域ねこです。
お気に入りの場所は、店の外に出している電照看板の下。夜になると、あたたかい灯りの下で丸くなり、まるで看板の番をしているように見えます。
くろろには、尻尾がありません。正確に言うと、ごく短い尻尾がちょこんとついているだけ。その愛らしい後ろ姿が、どこか健気で、見ているこちらの気持ちまでやわらかくなります。まだ完全に人に慣れてはいませんが、最近は少しずつ距離を縮めつつあります。以前は人の気配がするとピューッと逃げてしまっていましたが、今では、お客様が帰るときに入口の外で静かにお見送りをすることもあります。
地域ねことは、特定の飼い主がいない代わりに、地域の人々が協力して世話をする猫のことを指します。行政やボランティアが避妊・去勢を行い、エサやトイレの管理を分担しながら、猫と人が穏やかに共生する形を作っていく――そんな取り組みです。くろろもきっと、この町の人たちに見守られながら、安心できる居場所を探してきたのでしょう。
お客様がいないとき、くろろはそっと店の中に入ってくることもあります。
ガラス戸をすり抜けて、塗料棚の影やショーケースの下を歩き回ります。人の姿を見るとすぐに外へ出てしまいますが、その臆病さにも、どこか信頼の芽が見えるような気がします。
模型店に猫がいると、空気が少しやわらかくなります。ランナーを切る音やエアブラシのかすかな響きの中で、黒猫のくろろが看板の下で目を細めている――そんな風景は、まつり堂の日常の一部になりました。
もちろん、猫が苦手な方やアレルギーをお持ちの方には、ご不安もあると思います。くろろはあくまで地域ねこであり、長時間店内にとどまることはありません。掃除や衛生には十分配慮しています。どうかご安心ください。
ねこ嫌いの方にはゴメンナサイ。
けれど、くろろはこの街の一員であり、まつり堂模型店の静かな守り神のような存在です。
今日もきっと、電照看板の下でぬくもりを感じながら、人を少しずつ信じる練習を続けていることでしょう。