第1万回 ドール・模型作品展のご案内(※想像)
2025/12/23
第1万回 ドール・模型作品展のご案内(※想像)
2025年12月20日。
まつり堂模型店主催「想いのままに~ドール・模型作品展」は、ありがたいことに盛会のうちに第1回を終えることができました。
この展示会が、毎年一度、細く長く続いていけばいい。
そして、いつかは店の手を離れ、事務局形式となり、「模型のコミケ」の異名とともに、世界中のドールや模型が集まるイベントになれば――
そんなことを、店長おびおはぼんやり考えています。
とはいえ、イベントの持続性なんて誰にも分らないものですから、うまくいけば続くかもしれないし、続かないかもしれない、そんな軽い気持ちで取り組んでいきたいと思っています。
さて、ここからは完全なる妄想です。
記念すべき第1万回 ドール・模型作品展。
開催は今から1万年後。
その頃の地球は、AIとアンドロイドが文明の担い手となり、人類はすでに歴史の教科書――いや、博物館の展示ケースの中にいます。
会場の運営をしているのは、もちろんアンドロイド。
受付には「ヒューマノイド様、いらっしゃいませ(※人類は絶滅しました)」という丁寧すぎる注意書き。
人類は誰も来ないのに、規約だけは完璧です。
展示内容はというと、「第1万回記念」ということで、第一回を開催した生命体“人類”特集が大人気。
アンドロイドたちが、真剣な表情(プログラム)で人類を再現したドールや模型を展示しています。
・不完全で進化途上の関節構造
・左右非対称で成形不良な顔
・感情によって判断がブレる未完成の思考回路
・説明書を読まずに作業を始める習性
どれもアンドロイドにとっては、極めて興味深い題材です。
「この人類模型は“締切前夜になると急に覚醒する突然変異個体”を再現しています」
「こちらは“積みプラ”というなんらかの宗教的儀式と思われる神聖な行動を行う中年雄の像です」
「こちらの多くの布をまとった若年雌個体は、1万年前には“メイド”と呼ばれた最高神の化身だと研究者らは考察しています」
解説文はすべて真顔で、やたら丁寧。
アンドロイドたちは首をかしげながら言います。
「理解不能だが、そこが魅力的」
中でも話題を集めているのが、
「模型店店主」
というめったに見ることのできない希少種の再現展示。
レジ前で延々と客と雑談し、売上を求めるよりも作品を褒める行動は、種の存続に何の意味も持たないどころか、マイナスの行動である点も含め、アンドロイド研究者の間でも謎の種とされています。事実、近年の研究で、人類の中でも早期に絶滅した種であることがわかってきました。
「合理性ゼロだが、文化的価値は高い」
とのこと。
会場の片隅には、古文書扱いされた記録が展示されています。
そこには、こう書かれていました。
「この展示会は、うまくいけば続くかもしれないし、続かないかもしれない」
それを読んだアンドロイドたちは静かにうなずきます。
不確実性を受け入れながら、それでも何かを始める。
どうやら彼らは、人類の“非効率な情熱”を、かなり気に入っているようです。
第1万回 ドール・模型作品展。
来場者は全員アンドロイド。
出展物は滅びた人類。
それでも、会場には確かに「作る楽しさ」と「想いのままに表現する喜び」が満ちています。
もし1万年後のアンドロイドたちが、
「このイベント、やめどきが分からないな」
と困っていたら、それはもう大成功でしょう。
どうやら“模型沼”と“展示会沼”は、種族を超えて感染するようです。
――第1回の主催者より。