メイドねろこさんを見ていて思う「女性の方が色に強い」は本当なのか?
2026/02/05
科学の話と、まつり堂模型店の色探し名人の話
模型を作っていると、色にまつわる困った体験に何度も出会います。
同じ塗料を使っているはずなのに、「何かが違う」と感じる。
写真やパッケージを見ながら塗っているのに、完成するとそもそもが雰囲気が違う。
けれど、塗料の色とパッケージイラストを照らし合わせると、やっぱり同じ色・・・。
そんな経験を重ねるうちに、こんな言葉を耳にしたことがある方も多いはずです。
「女性の方が色の違いが分かるらしい」
「男性は色の解像度が低いんだよ」
これは単なるイメージなのでしょうか。それとも、科学的な裏付けのある話なのでしょうか。
今回の店長おびおのコラムは、この辺りについて考えてみたいと思います。ちなみに、店長おびおは「サイエンスコミュニケーター」歴数十年なので、以下のお話はかなり信じていただいてOKです。
結論から言うと、この話には科学的な根拠はあります。ただし、その意味を正しく理解しないと、かなり誤解を招きやすい話でもあります。
人の色覚、とくに赤や緑を感じ取る仕組みは、X染色体上にある遺伝子と深く関係しています。男性はX染色体を一本、女性は二本持っているため、女性の方が色を感じる受容体の組み合わせが多様になりやすい、という特徴があります。このため、統計的な実験では、女性の方が微妙な色の違いを見分ける課題で、平均値としてわずかに良い成績を示すことがある、という結果が報告されています。
さらに、女性ホルモンであるエストロゲンが視覚処理に関わる脳の働きに影響することも知られており、色の感じ方が時期によって(つまり、性周期によって)微妙に変わることもあります。こうした点を総合すると、「平均的な傾向として、女性は色の差に気づきやすい場合がある」という表現は、科学的に間違いではありません。
しかし、ここで話を終えてしまうと、大事なことが抜け落ちてしまいます。
色覚の研究で、研究者たちが繰り返し強調しているのは、性別による差よりも、個人差の方が圧倒的に大きいという事実です。
色を見る力は、視力のように生まれつき決まる単純な能力ではありません。どれだけ色を意識して見てきたか、どれだけ「違い」を考えながら色と向き合ってきたかによって、大きく鍛えられていく能力です。
長年、印刷やデザイン、写真、模型塗装などに関わってきた人であれば、性別に関係なく、非常に鋭い色の解像度を持つようになります。逆に言えば、経験がなければ、男女どちらであっても色の違いはなかなか見えてきません。
つまり、「女性だから色に強い」「男性だから弱い」という話は、あくまで平均値の話であって、目の前の一人ひとりには、当てはまらないこともあるのです。
まつり堂模型には、モデラーメイドの ねろこさん がいます。
ねろこさんは、お客様の間でも知られる「色探し」がとても得意な人です。写真やパッケージを見せて「この色にしたい」と相談すると、店内にある膨大な塗料の中から、驚くほど的確に近い色を見つけ出します。また、商品にジャストな色が無い時には、ベース色を選び、調色のレシピまで考え出してしまいます。
戦車の実車写真を見ながらの相談、航空機の箱絵を見ながらの相談、キャラクタープラモデルの成形色を再現したいという相談。どれも一筋縄ではいかないものばかりですが、ねろこさんは焦らず、じっくりと色を観察します。
その様子を見ていると、「色がよく見えている」というよりも、「色を分解して考えている」ように見えます。
これは赤なのか、茶色なのか。彩度は高いのか、沈んでいるのか。黄味があるのか、青に寄っているのか。黒を足して暗くした色なのか、補色方向に寄せて落ち着かせた色なのか。たとえば、一見すると赤であっても、実は茶色、などということも的確に見抜いてしまいます。
色を「感覚」ではなく、「構造」として捉えているのです。では、ねろこさんは女性だから、特別に色に強いのでしょうか。
答えは、半分だけイエスで、半分はノーです。
確かに、科学的には女性の方が色の違いに気づきやすい傾向はあります。しかし、それ以上に大きいのは、ねろこさんが模型の色を考え続けてきた経験です。完成品を見るときも、なぜこの色がそれらしく見えるのか、どこが効いているのか、どこを外すと違和感が出るのかを、常に頭の中で整理しています。
色の解像度とは、単に「たくさんの色が見える能力」ではありません。
色を比べ、言葉にし、再現方法を考える力です。さらには、店内にどのような色が商品として揃っているのかをすべて把握していなければなりません。そしてその力は、意識的に色と向き合うことで、誰でも確実に伸ばしていくことができます。
模型塗装で「色が合わない」と悩むとき、多くの場合、問題は目ではなく、考え方にあります。色をひとつの塊として見てしまうと、再現は難しくなります。しかし、色を要素に分けて考えるようになると、選択肢は一気に増えます。
まつり堂模型店では、そうした「色の考え方」そのものを大切にしています。
色に正解はありません。でも、「近づくための道筋」はあります。
次に色で迷ったときは、ぜひねろこさんに声をかけてください。
科学の話と、模型の経験と、現場で積み重ねてきた知恵を総動員して、あなたの「この色にしたい」に向き合います。
色は、見えるようになると、模型はもっと楽しくなります。
そしてその一歩目は、意外と身近な模型店にあるのです。Amazon で塗料を買って「あら違った」と思った方は、ぜひまつり堂模型店にお越しくださいね。