なぜまつり堂模型店には ICM社のキットがたくさんあるのか
2026/02/15
自分にできることがあまりに無さ過ぎて・・・
まつり堂模型店の棚を眺めると、ミリタリー、航空機、カーモデルのコーナーに、ひときわ存在感のあるメーカーがあります。ICM。ウクライナに本拠を置くプラモデルメーカーです。繊細なモールド、実機考証に基づく設計、独特のラインナップ。そのキットを手に取ると、「作る喜び」に真正面から向き合っている会社だということが伝わってきます。
ICMは、派手な宣伝よりも内容で勝負するメーカーだと、店長は感じています。大戦機や軍用車両、クラシックカーなど、決して“売れ筋だけ”を追わない。少しマニアックで、しかし確かな需要がある題材を丁寧にキット化していく。その姿勢は、地方で模型店を営む身として、どこか他人事に思えません。
まつり堂模型店では、ミリタリー系、航空機系、カーモデル系でICMの商品を積極的に仕入れています。それは単に「商品力があるから」という理由だけではありません。もちろん、精度や価格、組みごたえといった実務的な評価もあります。しかしそれ以上に、ICMというメーカーの背景にある状況を、無視できないからです。
ウクライナはいま戦争状態にあります。この戦争は、ロシアが武力によって他国の領土を奪おうとしている戦争だと、店長は理解しています。政治的な立場を声高に語るつもりはありません。ただ、武力で現状を変えようとする行為に対して、強い違和感を覚えます。そして、その渦中にあるウクライナの人々は、疲弊し、困窮しているはずです。日常が壊れ、先の見えない不安の中で暮らしている。その状況を想像するだけで、胸が締め付けられます。
もちろん、まつり堂模型店がICMのキットを少し多めに仕入れ、販売したところで、戦争が終わるわけでも、状況が劇的に好転するわけでもありません。正直に言えば、実際の意味はほとんどないかもしれない。売上のほんの一部がウクライナの企業に届いたとしても、それは大きな力にはならないでしょう。
それでも、模型店にできることは、これくらいしかないのです。
戦争のニュースを見ながら、「大変だ」と言うだけではなく、わずかでも具体的な行動を取ること。ICMのキットを店頭に並べ、丁寧に紹介し、誰かがそれを手に取り、楽しみながら組み立てる。その売上の一部が、遠く離れた国の模型関係者の仕事につながるかもしれない。見えないほどのわずかな力でも、ゼロではない。
模型は平和な趣味です。人を傷つけるためではなく、ものづくりの喜びを味わうための世界です。その平和な趣味を支えるメーカーが、戦争の中でも事業を続けている。ならば、模型店として、その努力に敬意を払い、応援したいと思うのは自然なことではないでしょうか。
まつり堂模型店は、特定の国を敵視するためにICMを扱っているわけではありません。ただ、困難な状況の中でもプラモデルを作り続ける人々に、静かに連帯の意思を示したいだけです。派手なスローガンも、大げさな表現もいりません。棚に並んだ一箱一箱が、その気持ちの表れです。
模型店にできることは小さい。しかし、小さいからこそ、誠実に続ける意味がある。ICMのキットがたくさんある理由は、そんな店長のささやかな思いの積み重ねなのです。