不遇の国産スーパーカー MID4 & MID4II

実車の紹介

1985年、東京モーターショーで日産が世界に向けて発表した「MID4」。

その名前が示す通り、ミッドシップエンジンと4輪駆動（4WD）を組み合わせた革新的なスーパーカーでした。当時の日本車といえばFRやFFが主流であり、4WDはラリーカーの専売特許のように扱われていた時代。そんな中、日産が突如披露したミッドシップ4WDのスーパーカーは、自動車ファンや海外メディアに大きな衝撃を与えました。
 

パワーユニットには、フェアレディZにも搭載された、3.0リッターV6のVG30DE自然吸気エンジンを搭載。最高出力は230馬力と控えめながら、電子制御を組み合わせたフルタイム4WDシステム、そして後に日産の代名詞ともなる「HICAS（四輪操舵システム）」を採用しており、技術力の高さを強烈にアピールしました。ボディは低くワイドに構え、当時のフェラーリやポルシェを意識したスタイルで「国産初の本格スーパーカー」として大きな注目を浴びます。
 

しかし、残念ながら市販化はされず、数台の試作車が造られたのみで終わってしまいます。理由のひとつには、当時の日本市場にスーパーカーを受け入れるだけの需要がなかったこと、また価格面でも採算が合わないことが挙げられます。日産にとってはあくまで「技術ショーケース」の役割が強かったのです。
 

それでも日産は諦めませんでした。1987年にはさらに進化した「MID4 II」を発表。

デザインはより洗練され、丸みを帯びた空力的なスタイルとなり、現代の目で見ても十分に魅力的です。搭載されたエンジンは、当時最新のVG30DETT ツインターボエンジン。最高出力は330馬力に達し、0-100km/h加速は5秒台と、フェラーリ328やポルシェ911ターボに肉薄する性能を備えていました。足回りには引き続きHICASや先進のサスペンションを採用し、走行性能はまさに「世界と戦える国産スーパーカー」でした。
 

しかし再び、夢は幻に終わります。市販化が真剣に検討されたとも言われていますが、開発コストの高さ、当時の円高不況、フェアレディZとスカイラインGT-Rを足して2で割ったような中途半端なキャラクターは、GT-R（R32）の開発に力を入れていた当時の日産においては、車名ブランド力の無さからビジネス上の優位性が認められず、量産計画は凍結されました。結果的にMID4 IIも試作車のみの存在に終わり、伝説だけを残すことになります。
 

とはいえ、このプロジェクトが無駄になったわけではありません。MID4/MID4 IIで培われたアテーサE-TS（電子制御トルクスプリット4WD）やHICASは、その後登場するR32スカイラインGT-Rに搭載され、日産の技術力を世界に示す大きな武器となりました。つまりMID4は、日の目を見なかった国産スーパーカーであると同時に、後のGT-RやZカーを陰で支えた「実験車」でもあったのです。
 

不遇でありながら、確かに日本車史に名を刻んだMID4とMID4 II。今でもモーターショーなどに展示されると、多くのファンがその前で足を止め、「もし量産されていたら…」と夢想せずにはいられない存在ですね。

プラモデルの紹介

そんな幻の名車「MID4 II」が、プラモデルとして蘇っています。

フジミから発売されている1/24スケールのキットは、特徴的なロングノーズ・ショートデッキのフォルムを忠実に再現。ヘッドライトやリアエンジンフードの造形も実車資料をもとに正確に設計されています。
 

模型ならではの魅力は、実車では決して手に入らないMID4を自分の手で「所有」できること。シルバーのボディカラーで仕上げれば実車そのままの迫力が蘇りますし、オリジナルのカラーリングで自分だけのMID4 IIを創り出すこともできます。なお、成形色はホワイトです。
 

「不遇の国産スーパーカー」と呼ばれるMID4 & MID4 II。
模型を通して、その栄光と幻影を手元に蘇らせてみませんか？