美プラの顔を支える「タンポ印刷」とは?
2025/09/14
美少女プラモデル、いわゆる「美プラ」を作るとき、多くのモデラーが一番気にするのは「顔」ではないでしょうか。目や口の印象ひとつで、完成したモデルの雰囲気が大きく変わってしまうからです。そんな美プラの命ともいえる顔の表情を支えているのが「タンポ印刷」と呼ばれる技術です。
美プラ以外では、お皿の模様などにも使用されています。
タンポ印刷の仕組み
タンポ印刷は、一言でいえば「スタンプのように目のイラストを顔パーツに押す」方法です。・・・といえば、単純な方法に思えますが、実はとても高度な仕組みです。大まかな流れは以下の通りです。
・版(凹版)をつくる
印刷したい模様(瞳や眉毛のデザインなど)を金属や樹脂のプレートに彫り込みます。これは「凹版」と呼ばれ、精密なエッチングやレーザー加工で作られます。
・インクを版に流し込む
凹版の溝にインクを流し込み、余分なインクを削ぎ取ります。模様部分だけにインクが残ります。
・シリコンパッド(タンポ)に転写する
やわらかいシリコンゴム製のパッドを凹版に押し付けると、模様部分のインクがパッドに移ります。シリコンはインクが「一時的にくっつき、すぐに離れる」性質を持っており、この特性を利用します。
・製品に印刷する
インクを抱えたパッドを顔パーツに押し付けると、今度は逆にシリコンからインクが離れ、立体的な曲面に模様がきれいに写し取られます。
この仕組みにより、シールやデカールでは難しかった立体的な顔パーツにも、正確に美しい模様を印刷できるのです。
曲面に強い理由
タンポ印刷の最大の強みは「柔らかいシリコンパッド」にあります。パッドは押し付けられると自在に変形し、球面や凹凸にもぴったり沿ってくれます。そのため、美プラの小さな顔のパーツにも自然な印刷が可能になります。
高精度を実現する工夫
・多層印刷:白目、虹彩、ハイライト、まつ毛などを順番に重ねることで、鮮やかで立体感のある表情を作り出します。
・インクの選択:プラスチック用の専用インクを使い、耐久性や発色の良さを保ちます。
・精密な位置合わせ:わずかなズレでも表情が崩れるため、専用治具でパーツを固定し、コンピュータ制御で正確に印刷します。
美プラとタンポ印刷
従来は完成品フィギュアで多用されていた技術ですが、近年はプラモデルにも広く導入されました。デカールよりも自然で、貼り合わせの失敗もなく、初心者でも高品質な仕上がりを楽しめます。メーカーによっては、目のパターン違いを複数用意し、印刷済みパーツを選べる工夫もされています。
メリット
高精度で安定した仕上がり
曲面にも自然に印刷できる
シールやデカールを貼る手間がない
カスタマイズとの関わり
タンポ印刷済みの顔パーツをそのまま使えば誰でも完成度の高い美プラが組めます。一方で、あえて印刷を落とし、自作デカールや筆塗りで“自分だけの表情”を描くモデラーもいます。つまり、タンポ印刷は初心者にとって安心できる土台であり、上級者にとってはアレンジのスタート地点でもあるのです。
まとめ
美プラにおける「タンポ印刷」は、誰もが安心して美しい仕上がりを得られるようにした大きな技術革新です。そのまま使っても良し、改造のベースにしても良し。模型は自由ですから、楽しみ方に“正解”はありません。
一方で、美プラにはタンポ印刷した顔パーツのほかに、無地の顔パーツとデカールが付属しています。「デカールはきれいに貼れないし、めんどくさいなぁ」と思う方も多いことと思います。ですが、デカールにはデカールの良いところがあります。タンポ印刷された顔は、あまりにタンポ印刷技術の精度が高いので、すべての顔がほぼ同じです(微妙に違うことはあります)。
ところが、デカールは、貼る人によって貼る位置がことなっていたり、同じ人でも指先がくるってずれたりすることがあります。それが美プラに個性を与えてくれます。個性はよりいっそう「この子はうちの子」感を醸し出し、世界に唯一の存在感、愛着を生み出します。
いつも美プラを組む時には、タンポ印刷の顔を使っている、という方は一度、デカールにも挑戦してみませんか?
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