日本陸軍「あきつ丸」
2026/02/14
まつり堂模型店の店頭には、アオシマのウォーターラインシリーズ「日本陸軍 あきつ丸(前期型)」があります。(店頭価格税込 3400円)
あきつ丸は、艦艇史のなかでも少し異色の存在です。あきつ丸は大日本帝国陸軍が建造・運用した揚陸艦(上陸用舟艇母船)で、陸軍では「特殊船丙型」に分類されました。「ガンダム ジークアクス」では、コモリさんの搭乗している「ソドン」に相当する船です。
上陸用舟艇の大発動艇を多数搭載し、船尾ハッチが開いて、迅速に発進・収容できる“ドック型”の運用思想をもっていた点が大きな特徴です。現代の強襲揚陸艦を思わせる先進性が、当時すでに試みられていた――その事実だけでも、模型にしたくなるロマンがあります。
開発の背景には、島国である日本の地理条件や、第一次大戦の上陸作戦の教訓がありました。陸軍は早くから上陸戦に注目し、舟艇の実用化を進め、1930年代には「神州丸」という本格的な舟艇母船を完成させます。
神州丸は実戦の上陸作戦で能力を発揮し、その成功が量産型の特殊船計画へとつながりました。あきつ丸はその発展型として1940年に起工、当初は秘匿のため商船風の外観で建造される予定でしたが、国際情勢の変化もあり、最終的には飛行甲板を備えた空母型の姿で竣工します(1942年)。
この「飛行甲板を持つ揚陸艦」という設計が、あきつ丸をいっそうユニークにしています。上陸部隊支援のため戦闘機を運用する構想があり、格納庫やエレベーターも備えました。ただし当初は“発艦はできるが着艦は想定しない”という運用で、実戦で計画通りの航空支援が行われた機会には恵まれませんでした。
そのかわり飛行甲板と格納庫は、航空機・車両・舟艇などを積む輸送スペースとして活用され、あきつ丸は南方各地への輸送・揚陸任務で働き続けます。ラバウルへ複数回入港したこと、米軍に護衛空母と誤認されたことなどは、当時の情報戦・識別の難しさも感じさせるエピソードです。
戦局が進み、潜水艦による通商破壊が深刻化すると、あきつ丸は“対潜の目”としての役割も期待されます。1943年にはオートジャイロ(カ号観測機)での発着試験が行われ、1944年には本格的な改装によって護衛空母的な性格を強めました。飛行甲板の拡幅、着艦制動装置や指揮灯の設置、防火設備の強化、対空火器の増設、対潜装備の追加――「揚陸艦」から「護衛空母」へ、目的に合わせて艦が変化していく過程は、模型的にも見どころが多いポイントです。
その後、まつり堂模型店のある下関市の対岸・門司―釜山航路などで輸送と哨戒任務に就きますが、1944年11月、フィリピンへの部隊輸送を担うヒ81船団に参加した航海で悲劇が訪れます。五島列島沖で米潜水艦の雷撃を受け、誘爆と火災ののち転覆・沈没。多数の将兵と乗員が失われました。
この艦の歩みは、上陸戦・輸送・航空運用・対潜と、当時の戦争が求めた役割を一隻に背負わせた“過密な実験”にも見えます。模型としての「あきつ丸」は、ただの艦船キットではなく、技術と運用思想がせめぎ合った歴史の断面を、手のひらサイズで眺められる題材です。
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まつり堂模型店
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