まつり堂模型店

「愛宕の三番砲塔は危なくないのか?」という疑問

お問い合わせはこちら

「愛宕の三番砲塔は危なくないのか?」という疑問

「愛宕の三番砲塔は危なくないのか?」という疑問

2026/03/22

高雄型重巡洋艦 愛宕のウォーターラインシリーズのパッケージを眺めていると、ふと引っかかる瞬間があります。子供の頃から「???」と思っていたのですが、三番砲塔が艦橋の方を向いているのです。「これ、間違えて撃ったら自分の艦橋を吹き飛ばしてしまうのではないか」。そんな素朴な疑問を抱いた方は、店長おびおだけではないはずです。

 

結論から言えば、その心配はないようです。愛宕の三番砲塔は、確かに艦橋の近くに位置し、艦橋の方を向いているのですが、その向きのまま発射されることは設計上防がれているとのことなのです。つまり、誤って自艦を攻撃してしまうような事態は、最初から起こらないように作られているらしいのです。
 

愛宕を含む高雄型重巡洋艦の主砲配置は、やや独特です。一番・二番砲塔が前方を担当し、三番砲塔は艦橋の直後に置かれながら後方射界を受け持つ、いわば「後ろを守る砲塔」になっています。そのため、通常の待機状態では後方を向いているのが自然な姿となります。

 

当たり前ではありますが、「向くこと」と「撃てること」はまったく別の話です。軍艦の主砲は、単純にレバーを引けば発射されるようなものではありません。砲塔の向きや仰角、そして周囲の安全条件が満たされて初めて発射が許可される仕組みになっています。特に愛宕のような重巡洋艦では、射撃指揮装置と電気的な発火回路が組み合わされており、危険な角度に砲が向いている場合には、回路そのものが遮断されるような安全機構が存在していたと考えられています。

 

このような仕組みは「射界制限」と呼ばれ、砲が自艦の構造物を損傷する可能性のある方向に入った場合、発射できないようにするものです。つまり砲は回転してその方向を向くことはできても、その状態では引き金が引けない。いわば機械と電気の両面から「撃てない」ようにしているわけです。この考え方は日本海軍特有のものではなく、当時の主要な海軍では広く採用されていた合理的な安全設計でした。

 

さらに興味深いのは、実戦下においてこの種の安全対策がより強化されていた形跡があることです。実艦の写真からは、射界制限に関する応急的な装置が追加されている例も確認されており、現場レベルでも「自艦を傷つけない」という点がいかに重視されていたかがうかがえます。戦闘においては敵からの攻撃以上に、味方のミスによる損傷を避けることが重要であり、そのための工夫は目に見えない部分にこそ多く施されていたようなのです。

 

愛宕の三番砲塔は、一見すると危険に見える配置をしています。しかしその裏には、射界の設定、電気的な発射制限、そして運用上の厳格な管理という、いくつもの安全装置が重ねられています。軍艦の設計において「自分を撃たない」というのは大前提であり、そのための工夫が徹底されているのです。

 

模型を組むとき、三番砲塔を後ろ向きにするか、それとも少し振ってみるか。その選択ひとつにも、こうした背景を知っていると、見え方が少し変わってきます。ただのパーツの向きではなく、その奥にある設計者の意図や当時の技術を感じ取ることができる。そこにこそ、模型趣味の奥深さがあるのではないでしょうか。

----------------------------------------------------------------------
まつり堂模型店
住所 : 山口県下関市幸町1-9 永冨ビルⅡ101
電話番号 : 083-292-7306
FAX番号 : 083-292-7306


----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。