子どものしつけは、模型店の仕事なのでしょうか
2026/07/06
とある昼下がりの出来事
先日、とある女性が少し怒った様子でご来店されました。
手には、どこか見覚えのあるNゲージのスターターセット。
お話を伺うと、息子さんが家のお金を勝手に持ち出し、そのお金で当店のNゲージセットを購入したとのことでした。
そして、
「この店は、小学生にもこんな高価なものを売るのですか」
とおっしゃいました。
私は、
「お金をお持ちであれば、小学生にも商品は販売しております」
とお答えしました。
すると今度は、
「うちの子が来ても、ものを売らないようにしてください」
とのこと。
要するに「うちの子だけ出入り禁止にしてほしい」というご要望です。
実際、悪質な迷惑行為を繰り返す方を出入り禁止にしたことはありますから、「出入り禁止」という仕組み自体は不可能ではありません。
しかし、問題はそこではありません。
私は毎日たくさんのお客様と接しています。
当然、お客様全員の顔やご家庭の事情を把握しているわけではありません。
小学生のお客様も大勢ご来店されますし、1万円前後もする、大スケールの軍艦キットを何度も買ってくださる小学生も複数おられます。
「この子には売る」「この子には売らない」という判断を、レジで正確に行うことなど現実には不可能です。
もし別の小学生を見間違えてしまったらどうでしょう。
「君には売れません」
人違いでそんなことを言われた子どもは、理由も分からず深く傷つくでしょう。
だから私は、
「お客様お一人お一人を特定・識別して、販売の可否を判断することはできません」
と、そのままお伝えしました。
残念ながら、その女性は憤慨してお帰りになりました。
もちろん、親御さんのお気持ちは理解できます。
せっかく家計のために置いていたお金を持ち出され、高価なおもちゃを買われてしまえば腹も立つでしょう。
しかし、それは家庭の中で解決すべき問題ではないでしょうか。
家のお金を勝手に持ち出してはいけないこと、お金は働いて得るものだということ、自分で自由に使ってよいお金と、そうでないお金の違いを教えること。
これは家庭でしか教えられないことです。
模型店は、お客様に商品を販売する場所です。
警察でも、学校でも、家庭教師でもありません。
家庭のしつけまで模型店が肩代わりすることはできませんし、すべきでもありません。
私は、子どもたちに模型という素晴らしい趣味を楽しんでもらいたいと思っています。
だからこそ、正しいお金の使い方も、模型を楽しむための大切なルールの一つとして、ご家庭で教えていただければと思います。
子どもを育てる責任は親にあります。
模型店にできることには限界があります。
その境界線を、お互いに理解し合える社会であってほしいと願っています。