まつり堂模型店

幸町午前5時

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幸町午前5時

幸町午前5時

2026/09/11

地方都市下関のある交差点の朝


午前5時。
まだ人通りのない幸町のT字路に、シャッターを巻き上げる音が響きます。

最初に動き出すのは、精肉店です。
店の中に明かりがつき、市内各地のお肉屋さんへ出荷する準備が始まります。
荷物を運ぶ足音。
短く交わされる声。
軽トラの荷台に積み込まれていくかつて生きていた肉のかたまり。
通りにはまだ朝の静けさが残っていますが、精肉店の中では、もう一日の仕事が勢いよく進んでいます。

次にシャッターが開くのは、鮮魚店です。
唐戸市場から仕入れてきた魚が、冷蔵ショーケースに並べられていきます。
照明を受けて光る魚の肌。
並べる向きや位置を整える店主の手が、次々と動きます。

ひととおり並ぶと、今度はお刺身の準備です。
まな板に向かい、包丁を動かす背中。
お客様が買いに来られるころには、きれいなお刺身が並んでいる。
そのための仕事は、こんな時間から始まっています。

そして、T字路を囲むもう一軒にも、明かりがともります。
模型店です。

……え? 精肉店、鮮魚店、と来て、模型店!?

お肉とお魚が朝早いのは、なんとなくわかります。
ところが、こちらで扱っているのはプラモデルです。
朝一番に箱を開けないと鮮度が落ちる、ということはありません。
ガンダムも昨夜と同じ姿で、おとなしく棚に収まっています。

では、店長おびおは、朝5時から何をしているのでしょう。

まずは掃除です。
夜の間は店内に置いている電照看板とノボリを外の所定の位置に設置。
掃除機をかけ、気になるほこりを取り、店内をひと回りします。

棚を見ると、昨日売れた商品の場所がぽっかり空いています。
奥に引っ込んでいる箱を手前に出し、傾いた箱を直し、商品名がきちんと見えるように並べます。
ここで、つい一歩下がって、眺めます。
うん、きれいになった。
でも、隣の棚が少し気になります。
そちらも直します。

今度は、その隣です。
模型店の棚は、なぜか一か所きれいにすると、別の場所から「こっちもお願いします」と声がするようです。

そのまま在庫を確認し、不足している商品を発注リストに加えます。
塗料や工具の棚も見て回り、「これも補充しないと」と書き足していきます。

次に、7時ごろに出社される、くろろ社長の朝食の準備。
カリカリの上に、大好物のチュールをかけて、いつでも食べられるように置いておきます。

続いて、パソコンの前へ。
前日に確認しきれなかった新製品の案内を開き、何を仕入れるか考えます。
これを待っているお客様はいらっしゃるだろうか。
何個くらい入れようか。
新製品の写真を見て「これはいいなぁ」と眺めていると、時計が進みます。

仕事です。
仕事なのですが、模型屋になる前から好きだったことなので、ちょっと境目があやしい時間でもあります。

夜の間に通販のご注文も届いています。
やったー!売れてる!! と画面に向かって思いながら、商品を棚から取り出します。
品番と内容を確かめ、梱包して、発送の準備。
箱に収めるときは、お客様のところまで無事に届きますように、です。

メール、X、LINEも順番に確認します。
お問い合わせ、お取り置きのご依頼、投稿へのコメント。
内容を確かめながら、一つずつ返信していきます。

そうこうしていると、もう一つ、確認を待っているものがあります。
3Dプリンターです。
前夜に造形を始めた品ができあがっています。
取り出して、表面を眺め、寸法や収まりを確認します。
思ったとおりにできていると、朝からちょっとうれしい。
次の造形をセットして、スタート。
こちらも働き始めました。
おびおが別の仕事をしている間も、少しずつ形を作ってくれます。

さて、ひと息つこうかと時計を見ると、だいたい8時を過ぎています。
あれ。さっき5時でしたよね?
お肉屋さんも、お魚屋さんも忙しそうですが、模型屋も、意外と朝にやることがあるのです。

まつり堂模型店の開店は午前9時。そこから逆算すると、5時に仕事を始めても、決して早すぎることはありません。
むしろ、「開店までに、あとこれだけは」と、最後は少しあわただしくなります。

幸町のT字路では、今日もお肉が運ばれ、お魚が並び、プラモデルの箱がまっすぐに整えられています。
模型の鮮度は変わりませんが、売り場は朝のうちに整えておきたい。

午前9時。 おびおとしては、もうずいぶん働いた気がしていますが、ここから開店です。
おはようございます。
いらっしゃいませ。 

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