奥が深い オリーブドラブの世界
2026/06/08
戦車や軍用車両を作る模型ファンなら、一度は悩んだことがあるはずです。
「オリーブドラブって、メーカーごとに色が違うやん、どれ使えばいいん💦」
まつり堂模型店の棚を見ると、GSIクレオスにも、ガイアノーツにも、モデルカステンにもオリーブドラブがあります。さらには、オリーブドラブを名乗っていない色まで含めると、軍用のオリーブ色は山ほどあります。
もちろん、実際に塗り比べてみても、色味は全く違っていて、茶色っぽいものもあれば、緑が強いもの、黄緑っぽいものまであります。
では、どれが正しいのでしょうか。
実はその答えは、
「全部正しい」
なのです。
そもそもオリーブドラブとは、特定の一色を指す名前ではありません。
語源は英語の「Olive(オリーブ色)」と「Drab(くすんだ茶色)」を組み合わせたもので、もともとは軍服や軍用装備に使われた保護色の総称でした。
ぶっちゃけていうと、オリーブ色と、くすんだ茶色(例えば、H84:マホガニー)を混ぜて作った色は、全部「オリーブドラブ」なんです。
この色は、第一次世界大戦の頃から各国で採用され、特に有名なのは第二次世界大戦中のアメリカ軍です。M4シャーマン戦車やジープ、トラックなど、多くの車両がオリーブドラブで塗装されていました。
ところが当時は現在のような厳密な国際規格や組織内規格による色管理が行われていたわけではありません。
同じ「オリーブドラブ No.9」という指定色であっても、
・塗料メーカー
・製造工場
・生産時期
・使用した顔料
・調色した人、塗った人、何に塗ったか
・塗った人のその日の気分💦
によって微妙に色が異なっていました。
さらに戦場に出れば状況はもっと複雑になります。
北アフリカの砂漠では強烈な紫外線によって退色し、黄色っぽく変色します。
ヨーロッパ戦線では泥や埃が付着し、灰色がかった色になります。
太平洋戦線では湿気や熱帯の環境によって汚れ方も変わります。
つまり実車のオリーブドラブは、最初から一色ではなく、時間とともに無数の表情を見せる色だったのです。
戦後になると、アメリカ軍ではFederal Standard(FS規格)による色管理が行われるようになりました。
例えば、
・FS34087
・FS33070
・FS34088
など、似ているようで異なるオリーブ系カラーが存在します。
しかしこれもまた、「オリーブドラブ」という名前の一部に過ぎません。
模型メーカーが発売しているオリーブドラブは、必ずしも特定のFS番号をそのまま再現したものではありません。
むしろ、
「完成模型として最も格好よく見える色」
を目指して調整されていることが多いのです。
例えば、モデルカステンのC-35 オリーブドラブ[2]は、深緑寄りで重厚感があり、ウェザリングを施した戦車によく似合います。
GSIクレオスの水性ホビーカラーH78は、茶色味を含んだ標準的な米軍オリーブドラブで、シャーマン戦車やジープを塗る際の定番色として人気があります。
ガイアノーツのTL-001はやや明るく黄緑寄りで、退色した実車やスケール感を意識した仕上がりに向いています。
つまり、
「どれが正しい色か」
ではなく、
「どんな状態の車両を再現したいか」
が重要なのです。
新品の工場出荷状態を再現したいならH78。
長期間戦場で使われた重厚な車両ならC-35。
日焼けして色褪せた車両ならTL-001。
・・・という考え方も、無限にある考え方の一つにすぎません。
実車としてあり得る色は無限にあるのです。
模型製作ではよく「正しい色」を求めたくなります。しかしオリーブドラブほど、その考え方が通用しない色もありません。
同じ車種、同じ部隊、同じ時代であっても、写真ごとに色が違って見えることさえあります。
だからこそオリーブドラブは面白いのです。
単なる緑色ではありません。
そこには軍事史があり、戦場の環境があり、退色や汚れの物語があります。
模型のオリーブドラブを見比べるときは、ぜひこう考えてみてください。
「この色の向こうには、どんな戦場と歴史があったのだろうか」
そして、展示会などで老害さんが「この色はおかしい」などと余計なことを言ってきたときには。
「これが、私の作品のオリーブドラブなんです」
と堂々と言って、このブログの内容をウンチクとして語って撃退してください💦
オリーブドラブとは、戦車模型の基本色であると同時に、100年以上にわたる軍事史そのものを映し出す色、さらには、「あなた」の作品に対するポリシーを明確に提示する色なのです。
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まつり堂模型店
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