日本海軍戦艦「長門」の煙突の変遷
2026/09/30
2本の直立煙突から、屈曲煙突、そして1本へ
こんにちは。まつり堂模型店、店長のおびおです。
山口県はかつて、「周防の国」「長門の国」と呼ばれていました。まつり堂模型店のある下関市は長門の国の中心都市でした。そして、長門の国の名をとった軍艦と言えば「戦艦長門」。
戦艦「長門」の外観上の特徴はいろいろあります。積み木細工のように高く積み上がった艦橋、大きな主砲、そして中央に立つ太い煙突。煙突については、ネットで「長門」の画像を検索して見比べると、煙突が2本あったり、途中で大きく曲がっていたり、1本だったりします。
これは、同じ長門が改装によって姿を変えたためです。
今回は3枚の写真を使い、煙突だけに注目して、その変遷をたどってみましょう。
モクモクと黒煙をはく最初の写真をよく見てみると、煙突が2本あることがわかります。これが最も初期の戦艦長門の姿です。
1920年、長門は直立した2本の煙突を備えて竣工しました。
長門は、ボイラーでつくった蒸気によってタービンを回し、航行する軍艦です。煙突は、そのボイラーで燃料を燃やした際に生じる排ガスの出口でした。船内の機関設備と結びついた、実用上欠かせない構造物だったわけです。
写真を見ると、前側の煙突が艦橋のすぐ後ろに立っていることがわかります。この煙突配置は、艦内のボイラーの配置を反映したものですが、前側の煙突の位置が、就役後に問題となりました。条件によって、排煙が艦橋へ流れ込んでしまったのです。
艦橋やその上方では、周囲を見張り、敵艦を探し、操舵や砲撃の指揮を行います。そこに煙や熱気がかかれば、乗員の仕事を妨げます。大砲が強力でも、相手がよく見えなければ能力を十分に発揮できません。この写真は、煙突から出る煙の量と、艦橋との近さを実感できる写真です。
対策として、1922年には前部煙突の上に、煙の流れを変えるためのフードが取り付けられました。しかし、それだけでは十分ではなく、さらに煙突の形そのものを変えることになります。
次の写真は、前側の煙突が後方へ大きく曲がった「屈曲煙突」の姿です。煙突の本数は、まだ2本です。1924年の改装で登場しました。
前部煙突は、下から途中まで立ち上がったあと、大きく後方へ曲がり、上部で再び上を向く形になりました。横から見ると、煙突の出口が根元より後ろへ移動していることがよくわかります。
狙いはもちろん、煙の出口を艦橋から遠ざけることでした。船内にあるボイラーの位置を変えることは困難ですので、その上に続く煙の通り道を曲げて、出口の位置を調整したのです。
「煙が邪魔なら、煙突を曲げてしまおう」。形だけを見ると大胆ですが、既存の艦に手を入れる方法として考えられた、具体的な問題への対策でした。
ただし、屈曲させたことで、どのような風向きや速力でも煙の問題が完全になくなった、とまでは言い切れません。艦上の空気の流れは複雑で、改装の効果についても資料によって評価に違いがあります。
一般に、曲がった煙道には流れの抵抗が生じ、構造も複雑になります。ただし、長門で具体的にどれほど性能や整備へ影響したかは、今となっては判断できません。
それでも、この独特な煙突は長門を見分ける大きな特徴となりました。アオシマから発売されているこの時代の長門の模型の商品名に「屈曲煙突」と付けられるのも、その姿を強く印象づける部分だからです。
最後の写真は、大改装後の最終型の長門です。前側の屈曲煙突がなくなり、煙突は1本になっています。この変化は、1934年から1936年にかけての近代化改装でした。
この時代は、ワシントン海軍軍縮条約と、それに続くロンドン海軍軍縮条約によって、新しい戦艦の建造が制限されていました。そのため、保有する戦艦を改装し、能力を高めて使い続けることが重要になっていたのです。
長門も大規模な改装を受け、機関設備が更新されました。石炭を併用していた従来のボイラー構成から、重油専焼の設備へと改められ、排煙系統も整理されます。その結果、前部煙突が撤去され、煙突は1本になりました。
つまり、これは「曲がった煙突を真っすぐに戻した」という変更ではありません。船内の設備を改めたことで、必要な煙突の構成そのものが変わったのです。
屈曲煙突がなくなった理由も、単純に「失敗だったから」と説明するのは適切ではありません。煙突だけを交換した改修と、機関設備を含めて更新する大改装では、変更の規模が違います。
この改装は1936年に完成しています。したがって、1939年の第二次世界大戦開戦時にも、1941年の太平洋戦争開戦時にも、長門はすでに1本煙突の姿でした。屈曲煙突は、大正末期から昭和初期にかけての長門を特徴づける姿なのです。
3枚を並べると、「直立した2本」「前側を曲げた2本」「大改装後の1本」という流れが見えてきます。
同じ艦を模型で作り比べるときも、煙突を見るだけで、再現している時代の大きな違いがわかります。そして、その形には、煙に悩んだ乗員や設計者の工夫、軍縮時代に既存艦を使い続けるための近代化が刻まれています。
店頭の「長門 屈曲煙突」の箱を見かけたら、ぜひ煙突の曲がり方にも注目してみてください。少し不思議な形の向こうに、戦艦を改良し続けた人々の試行錯誤が見えてくるはずです。
まつり堂模型店
750-0001 山口県下関市幸町1-9
まつり堂模型店(山口県下関市)(@matsurido_model)さん / X
----------------------------------------------------------------------
まつり堂模型店
住所 : 山口県下関市幸町1-9 永冨ビルⅡ101
電話番号 :
083-292-7306
FAX番号 :
083-292-7306
----------------------------------------------------------------------
