まつり堂模型店

悪魔の証明(模型屋編)

お問い合わせはこちら

悪魔の証明(模型屋編)

悪魔の証明(模型屋編)

2026/10/06

先日かかってきた一本の電話

「悪魔の証明」という言葉があります。

例えば、「この世界には猫がいるを証明せよ」と言われたなら、猫を一匹だけでも見つければ、この世界には猫がいることを証明できます。

ところが、「この世界のどこにも悪魔はいないことを証明せよ」となると、世界中を探して見つからなくても、まだ見ていない場所にいるかもしれません。

「ない」ということを確かめようとすると、途端に難しくなる。そんな証明の難しさを表す言葉です。

今は模型屋を営んでいる私も、あるとき、これに少し似た難しさに出会いました。
それは、「新品の商品が、中古品ではないと説明すること」です。

もちろん、仕入れの経緯など、示せる事実はあります。
それでも、いったん「これは中古品だ」と感じられたお客様に、その疑いを解いていただくのは、また別の難しさがあるのです。

先日、ご高齢の男性のお客様からお電話がありました。
Amazonで購入した鉄道模型について、「新品を買ったのに中古品が届いた」と、大変なお怒りようでした。発送元は当店です。もちろん、発送した商品は正真正銘新品です。  

楽しみにしていた商品が、思っていたものと違う。そう感じたときの残念さは、模型を好きな私にも分かります。それが怒りとして、店舗に向かって爆発するのも当然のことかもしれません。

お客様は言葉を荒げながら、次のような理由で、中古品であると判断されたことを説明してくださいました。

一つ目は、箱がフィルムで包まれていたこと。
まつり堂模型店では、箱の傷みや退色を抑えるため、ほぼすべての商品をUVカットフィルムでラッピングしています。お客様にきれいな状態でお渡ししたい、という気持ちから続けている作業です。しかし、その独自の包装が、今回は「中古品を包み直したものだ」という疑いにつながってしまいました。

二つ目は、フィルムの内側に、内容物の写真が入っていたこと。
これは、ラッピングによって箱を開けて中をご覧いただけなくなるための工夫です。メーカー提供の商品画像を印刷し、中身が分かるように添えています。私たちにとってはいつものご案内ですが、その事情を知らなければ、「どうして写真が入っているのだろう」と思われても不思議ではありません。お客様には「これは中古品の売り方だ」とお叱りの言葉を頂きました。

そして三つ目が、連結器が交換されているように見えたことでした。
メーカーのホームページを確認すると、その連結器は製品の仕様でした。ただ、その情報をご案内しようとしても、お客様はホームページをご覧になれないとのこと。こちらが説明の根拠にしたい情報も、相手が確認できなければ、その場で安心につなげるのは難しいものでした。

十分にご納得いただけないまま、最後は「Amazonに返品する」とおっしゃって、電話は終わりました。

電話を置いてから、少し、もやっとした気持ちが残りました。
箱を守るためのフィルム。中身を伝えるための写真。どちらも良かれと思って加えたものが、新品を疑う理由になってしまったのです。お店の意図と、お客様の受け取り方。その間には、こちらが思うより大きな隔たりがあるのかもしれません。

今回のことは、「新品です」と繰り返すだけでは届かない説明がある、と考えるきっかけになりました。包装の理由も、私たちには当たり前でも、初めて買ってくださる方には当たり前ではありません。

商品をきれいに保つことと、安心して受け取っていただくこと。その両方を、どうすれば一緒にお届けできるのか。
模型屋にとっての「悪魔の証明」は、なかなか難しい宿題です。

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。